ZEB 基礎編

 先週、札幌市主催の「ZEB基礎講座」を受講してきました。

 2050年カーボンニュートラルに向けた札幌市としての目標、具体的な施策の説明から始まり、後半は北電の担当者からZEBを取り巻く環境、政府の政策、ZEBを実現するための大枠の設計手法等々盛りだくさんの内容で、実務者としても非常に興味深い内容のセミナーでした。

 建築関係者以外にはあまり馴染のない言葉だと思いますので少し説明をすると、

 ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは、『室内及び室外の環境品質を低下させることなく、負荷抑制、自然エネルギー利用、設備システムの高効率化等により、大幅な省エネルギーを実現した上で、再生可能エネルギーを導入し、その結果、運用時におけるエネルギー(あるいはそれに係数を乗じた指標)の需要と供給の年間収支(消費と生成、又は外部との収支)が概ねゼロもしくはプラス(供給量>需要量)となる建築物』を指す。と、定義されています。

 要は、消費するエネルギーを少なくした上で、その少なくなった消費エネルギーについても太陽光発電などで賄い、実質的な消費エネルギーをゼロにした建物という事になります。あくまで運用時での消費エネルギーを評価対象としており、建設時や解体時のエネルギーは含まれていなかったり、オフィスで使うOA機器の電力等は対象外だったりとライフサイクル的な観点からみると、片手落ちな部分もありますが、ZEBとは上記のような定義となっています。

 さらに、ZEBの中でも1次エネルギー消費量の削減率によって性能の良い順に「ZEB」「nearly ZEB」「ZEB ready」「ZEB Oriented」とランク付けされています。基準値の50%の1次エネルギー削減率を外皮性能と省エネ設備の導入で達成したものが「ZEB ready」となり一次予選通過。そこから太陽光等の再生可能エネルギーで削減率を75%としたものが「nearly ZEB」、100%の削減率で「ZEB」となります。

 では、ZEBとすることでどのようなメリットがあるのか?

札幌市セミナー資料より抜粋

1.光熱費・CO2排出量の削減

  • 外皮性能を高めて高効率な設備を導入することで、光熱費の削減や、CO2排出量の削減につながります。ただし、省エネの建物だからといってジャブジャブエネルギーを使っていては、本末転倒。最終的には、運用面を含めた利用者の意識改革も重要なことは言うまでもありません。

2.快適な就業環境の実現、生産性の向上

  • 外皮性能を向上させることで、少ないエネルギー消費量で快適な環境を実現することができます。
  • 作業効率もUPし、生産性も向上します。25℃以上の環境では、室温が1℃上がるごとにパフォーマンスが2%減少するという調査結果もあります。(ヘルシンキ工科大学とローレンスバークレー国立研究所の共同研究)
  • 政府でいうところの、クールビズとかウォームビズは、ただでさえ低いニッポンの労働生産性をさらに低下させる愚策であり、我慢とか忍耐とかいった昭和の精神論でしかありません。日本人は良く耐えてきた!そろそろ快適な環境で生産性の高い仕事をしても良いのでは?少ないエネルギーで。

3.災害時の事業継続

  • 少ないエネルギーで建物の運用が可能なため、災害時に建物機能を維持しやすくなります。
  • 100%の建物機能を維持するには、発電機の併用が不可欠です。災害時の避難拠点としての地域貢献を図るのであれば尚更です。

4.企業価値の向上

  • SDG’sやESG投資といった企業の環境配慮行動に対して評価を行う機運が高まっ ており、(世界の投資額の26.3%がESG投資[2016年時点])ZEB化は企業価値の向上に繋がります。
  • 建築物のエネルギー性能などに関する認証が将来的な不動産価値の向上に繋がります。(BELS、CASBEE等)
  • ニッポンでは、今後更なる意識の向上が求められます。新たな価値の創造には、市井の人々からのボトムアップが必要不可欠です。

 さらにZEB採用への動機付けとして、政策としてかなり手厚い補助金がついており(ランクに応じてZEBに必要となった建築・設備費の1/3~3/5)、2050年カーボンニュートラルへ向けた政府の本気度が伺えます。

 日本の着工床面積の大半を占める大型物件に焦点をあてて手厚い対策を行うのは大賛成です。個人的には床面積は少ないが着工件数の多い戸建て住宅にももっと厳しい政策をとるべきだとは思いますが…。手間の割にリターンが少なく、対費用効果やらいろいろなしがらみやらが纏わりついているのは良く分かります。良く分かりますが、もう1段、いや2,3段はギアを上げてもらわないと世界との差は広がるばかりです。